コピトレ(コピートレード)では、まねる相手の取引のやり方を「ストラテジー」と呼ぶことがあります。業者のアプリやMT5のシグナルの一覧には、ストラテジーごとに利益率・勝率・最大ドローダウン・運用期間などの数字が並びます。
ただ、この数字は「何を含めて、どの期間で、費用を引く前か後か」で意味が変わります。同じ「最大ドローダウン10%」でも、含み損を入れた数字か、決済した後の残高だけの数字かで、読み方がまったく違います。
この記事では、成績表の数字を1つずつ取り上げ、どう計算された数字で、どこに落とし穴があるかを整理します。特定のストラテジー・トレーダー・業者は推しません。また「この数字なら合格」という線も引きません。数字の意味と、読者の側で確かめられる確認項目を並べます。コピトレ全体の仕組みはコピトレとは?仕組み・費用・詐欺の見分け方で、始めるまでの手順はコピトレのやり方で解説しています。
この記事で扱うこと
「コピトレ ストラテジー」で出てくる解説記事を7本読みました(業者の自社メディア、海外FXの比較サイト、個人のブログなど)。多くは「利益率だけで選ばない」「最大ドローダウン・運用期間・勝率をあわせて見る」「ナンピン・マーチンに注意」という点で共通しています。この記事でもそれらは扱います。
そのうえで、7本に無かった次の3点を足しました。
- 最大ドローダウンが「残高」で計算されているか「含み損を含む資産」で計算されているかの違い(MT5の公式ヘルプの定義から)
- EUの金融当局(ESMA)が2023年に示した、コピトレの成績表示とトレーダーへの報酬についての見方
- 勝率から本当の実力をどこまで読めるか、取引の回数ごとの「ぶれの幅」(AGITOの計算)
成績表の数字と、その読み方
一覧に出る主な数字と、それぞれの落とし穴を表にします。数字の名前はサービスによって少しずつ違います。
| 数字 | 何を表すか | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 利益率(成長・リターン) | 始めた時点から資金が何%増えたか | 期間が短いと大きく出やすい。費用を引く前か後かがサービスによって違う |
| 最大ドローダウン | 資金が一番高い所から、その後どこまで減ったかの最大の幅 | 残高で計算するか、含み損を含めて計算するかで値が大きく変わる |
| 勝率 | 決済した取引のうち、利益が出た割合 | 1回の負けが大きいと、勝率が高くても全体は赤字になり得る |
| 運用期間(週・日数) | 最初の取引から何週間たったか | 期間が長くても、取引の回数が少なければ判断の材料は薄い |
| 取引回数 | 決済した取引の数 | 少ないと、勝率や利益率が偶然で上下しやすい |
| プロフィットファクター(PF) | 利益の合計÷損失の合計。1より大きければ、取引の合計は黒字 | 決済した取引だけで計算される。抱えたままの含み損は入らない |
| フォロワー数・コピーされている金額 | どれだけの人がコピーしているか | 人気の目安であって、成績の良さを示す数字ではない |
ドローダウンの計算のしかたはドローダウンとは?、プロフィットファクターはプロフィットファクターとは?で詳しく扱っています。
最大ドローダウンは「残高」か「含み損を含む資産」か
ここが、競合の解説でほとんど触れられていない点です。
MT5の公式ヘルプは、ドローダウンを2種類に分けて定義しています。1つは「残高」のドローダウン(Balance Drawdown)で、決済した後の口座残高の落ち込みです。もう1つは「エクイティ」のドローダウン(Equity Drawdown)で、まだ決済していないポジションの含み損益を入れた資産の落ち込みです。
MT5のシグナル購読のヘルプでも、シグナルの詳細に出る「残高」は「現在開いているポジションの利益/損失を含まない口座残高」と説明されています。また、コピーした成績の報告に出る「最大ドローダウン%」は「残高のドロップ」と書かれています。
この違いが大きく出るのが、負けているポジションを決済せずに持ち続けるやり方です。
| 取引のしかた | 残高のドローダウン | 含み損を含むドローダウン |
|---|---|---|
| 負けたらすぐ損切りする | 損切りのたびに残高が減るので、両方の差は小さい | 残高のドローダウンと近い |
| 含み損を抱えたまま、戻るのを待つ(ナンピンなど) | 決済しないので、残高はほとんど減らない | 含み損がふくらむと大きくなる |
たとえば、含み損が資金の40%に達しても、戻るまで決済しなければ、残高のドローダウンは0%のままです。このとき、成績表の最大ドローダウンが残高で計算されていれば、表示は小さいままになります。
確認項目
- 表示されている最大ドローダウンは、残高で計算したものか、含み損を含めたものか(サービスの説明やヘルプに書かれているか)
- いま開いているポジションと、その含み損益が見られるか
- 残高のグラフと、含み損を含む資産(エクイティ)のグラフの両方が出ているか。出ているなら、2本の線の離れ方
勝率が高いほど良い、とは限らない
勝率が高くても、1回の負けが大きければ、全体では損になります。勝ち1回の平均の利益と、負け1回の平均の損失の比から、収支がちょうどゼロになる勝率を計算できます(AGITO計算。スプレッドや手数料は入れていません)。
| 平均の利益:平均の損失 | 収支がゼロになる勝率 |
|---|---|
| 1:1 | 50.0% |
| 1:2 | 66.7% |
| 1:3 | 75.0% |
| 1:5 | 83.3% |
| 1:10 | 90.9% |
| 1:20 | 95.2% |
計算は「平均の損失 ÷(平均の利益+平均の損失)」です。たとえば平均の利益が1、平均の損失が10なら、勝率90%でも、収支ゼロの勝率90.9%にわずかに届かず、取引を重ねるほど少しずつ減っていきます。
成績表に「平均の利益」「平均の損失」が出ているサービスなら、この比を出せます。出ていない場合は、勝率だけでは収支の向きが読めない、ということになります。
確認項目
- 平均の利益と平均の損失(または1回の最大の損失)が表示されているか
- その比から見て、表示の勝率が収支ゼロの勝率をどれだけ上回っているか
取引の回数が少ないと、勝率はどこまでぶれるか
取引の回数が少ないと、本当の実力より勝率が高く出たり低く出たりします。勝率70%と表示されたストラテジーについて、取引の回数ごとに、本当の勝率がおよそどの範囲にあり得るかを計算しました(AGITO計算。95%の範囲を正規近似で出したおおよその値で、取引どうしが互いに影響しないと仮定しています)。
| 取引の回数 | 表示が勝率70%のとき、本当の勝率のおよその範囲 |
|---|---|
| 10回 | 約42〜98%(±28ポイント) |
| 30回 | 約54〜86%(±16ポイント) |
| 100回 | 約61〜79%(±9ポイント) |
| 300回 | 約65〜75%(±5ポイント) |
10回の取引で勝率70%と出ていても、本当の勝率が50%を下回っている可能性は十分に残ります。運用期間の長さだけでなく、その間に何回取引したかも、判断の材料の厚さに関わります。
確認項目
- 運用期間とあわせて、取引の回数が表示されているか
- 相場が大きく動いた時期(急落・急騰)を、その運用期間の中に含んでいるか
ナンピン・マーチンの見分け方
ナンピンは、値下がりしたところで買い増して平均の買値を下げるやり方です。マーチンゲール(マーチン)は、負けるたびに次の取引量を増やすやり方です。どちらも、相場が戻れば小さな利益で決済できるため、勝率が高く、残高のグラフがなめらかに右肩上がりに見えやすい特徴があります。
一方で、取引量はどんどん大きくなります。たとえば0.01ロットから始めて、負けるたびに2倍にしていくと、取引量は次のように増えます(AGITO計算)。
| 回数 | その回の取引量 | それまでの合計 |
|---|---|---|
| 1回目 | 0.01ロット | 0.01ロット |
| 3回目 | 0.04ロット | 0.07ロット |
| 5回目 | 0.16ロット | 0.31ロット |
| 7回目 | 0.64ロット | 1.27ロット |
6回続けて負けると、7回目は最初の64倍の量を1回で取引し、それまでの合計では127倍の量を抱えることになります。仕組みと危険性はナンピン・マーチンゲールの危険性とは?で詳しく解説しています。
成績表から読み取れる手がかりを並べます。
確認項目
- 勝率がとても高いのに、平均の損失が平均の利益より何倍も大きくないか
- 同じ銘柄・同じ向きのポジションが、値段を変えていくつも同時に開いていないか
- 取引量が、負けの後に増えていく並びになっていないか(取引履歴が見られる場合)
- 残高のグラフに対して、含み損を含む資産のグラフが大きく下に離れる時期がないか
- サービスの画面に、ナンピン・マーチン・グリッドなどの表記がないか
「ランキング上位」で決める前に
一覧はたいてい、利益率の高い順に並べられます。ここには、数字そのものとは別の落とし穴があります。
- 期間の短いものが上に来やすい: 数週間で大きく増えたストラテジーは、利益率の順位で上に来やすくなります。大きく増えたのは、大きな取引量を取った結果であることもあります
- いま残っているものだけが並ぶ: 大きく負けて止まったストラテジーや、作り直されたストラテジーは、一覧から消えていることがあります。いま見えている上位だけを見ると、全体の成績より良く見えます
- やり方が途中で変わることがある: 取引量・銘柄・持つ期間が変わると、過去の数字は今のやり方の成績ではなくなります
EUの金融当局のESMA(欧州証券市場監督機構)は、2023年3月30日にコピトレを提供する会社への監督の考え方をまとめた文書(Supervisory Briefing on Copy Trading)を出しています。日本の法令ではありませんが、成績の見せ方について、監督する側が何を気にしているかが分かります。たとえば、監督当局が会社に確かめる質問の例として、次のような点を挙げています。
- 過去の成績が、宣伝の中で一番目立つ要素になっていないか
- 過去の成績は直近5年分(サービスが5年未満なら、12か月単位でそろった期間)を出しているか
- 過去の成績の計算と表示の方法を、分かりやすく説明しているか
- 費用を引く前の成績を出すなら、手数料などの影響を示しているか
- 将来の成績の見込みを、模擬(シミュレーション)の過去の成績にもとづいて出していないか
これらは読者の側の確認項目としても使えます。
確認項目
- 一覧の並び順は何の数字の順か、その数字は何日・何か月の期間か
- 成績の計算方法の説明があるか
- 表示の成績は、手数料を引く前か後か
コピー元のトレーダーへの報酬のしくみ
ESMAの同じ文書は、コピトレで利害がぶつかる(利益相反)おそれがある場面として、コピーされるトレーダーへの支払いのしくみを挙げています。監督当局が確かめる質問の例として、トレーダーへの変動する報酬が、次のような基準で決まっていないかを挙げています。
- コピーされた取引の数と金額
- そのストラテジーのフォロワーの数
- 運用資産の平均の成績
報酬が取引の数やフォロワーの数で決まると、トレーダーには、取引を増やしたり、短い期間で目立つ成績を出してフォロワーを集めたりする動機が生まれ得ます。コピーする側の利益と、トレーダーの利益が同じ向きとは限らない、ということです。
確認項目
- トレーダーへの報酬は何で決まるか(利益の一部か、取引量か、フォロワー数か)がサービスの説明に書かれているか
- 成功報酬(利益の一部をトレーダーに払うしくみ)が何%で、どの時点の利益に対してかかるか
費用を引くと、表示の成績はどう変わるか
表示の利益率が費用を引く前の数字なら、手元に残る割合は小さくなります。たとえば表示が年30%の増加で、利益の20%を成功報酬として払う場合、それだけで手元に残る増加は年24%になります(AGITO計算。30%×(1−20%))。ここにスプレッドや取引手数料、スワップが加わると、さらに小さくなります。
自分の資金が少ないと、もう1つずれが生まれます。コピーされる取引量は、多くのサービスで、相手と自分の資金の比で決まります。相手の資金が1万ドルで0.10ロットの取引をしたとき、自分の資金が500ドルなら、比で計算した量は0.005ロットです。業者の最小の取引量が0.01ロットなら、そのままの比ではコピーできません。最小の量にそろえられれば、相手より2倍の比率でポジションを持つことになり、コピーされなければ、相手と同じ成績にはなりません。MT5のヘルプも、相手と自分の口座で最小・最大の取引量の決まりが合わないと、コピーされる取引の量に大きな違いが出ることがあると書いています。資金の少ない口座ほど、成績表の数字と自分の口座の結果がずれやすい、ということです。
費用と取引量の計算の考え方はコピトレのやり方の「配分の計算方法」と、MT5のシグナルを使う場合のコピトレはMT5でもできる?でも扱っています。費用を引いた手残りは、コピトレの費用計算ツールで金額を入れて試算できます。
確認項目
- 自分の資金で比を計算したとき、業者の最小の取引量を下回らないか
- 下回るとき、そのサービスは最小の量にそろえるのか、コピーしないのか
ドローダウンから戻るのに必要な増え方
最大ドローダウンを「自分の資金に当てはめるとどうなるか」も、確認の材料になります。資金が減った後、元の額に戻るには、減った割合より大きな増え方が要ります(AGITO計算。減った割合 ÷(1−減った割合))。
| 資金の減り方 | 元に戻るのに必要な増え方 |
|---|---|
| 10%減る | 11.1%増える |
| 20%減る | 25.0%増える |
| 30%減る | 42.9%増える |
| 50%減る | 100%増える |
| 70%減る | 233.3%増える |
過去の最大ドローダウンは、これまでに起きた落ち込みの最大で、これから先の落ち込みの上限ではありません。過去の値より深く落ちることもあります。
確認項目
- 過去の最大ドローダウンと同じ割合で自分の資金が減ったとき、金額でいくらになるか
- その金額が減ったとき、コピーを続けるか止めるかを、始める前に決めているか
- 止める基準(何%減ったら止めるか)を、サービスの設定で入れられるか
リスク・注意点
- コピトレは、相手の取引の結果がそのまま自分の口座に出る仕組みです。相手が損をすれば自分も損をし、元本が減ることがあります
- 成績表の数字は、すべて過去の結果です。どの数字も、これから先の成績を保証するものではありません
- 表示の最大ドローダウンが小さくても、含み損を抱えたまま決済していないだけのことがあります。残高のドローダウンか、含み損を含むものかで読み方が変わります
- 相場が急に動くと、止める基準を設定していても、その水準より不利な価格で決済されることがあります
- 「勝率90%以上」「月利〇%」など、成績の数字を前に出した勧誘には、詐欺の典型的な形と重なるものがあります。損をしないことや毎月決まった利益を約束されたり、個人の口座への振込みを求められたりしたときの見分け方はコピートレードは詐欺?で解説しています。安全面の確認項目は安全なコピトレの選び方にまとめています
- 海外の業者は、日本の登録を受けていないことが多く、日本の投資者保護の外で取引することになります。取引先が金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」に載っているか、「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」の警告の一覧に名前が出ていないかも確認項目です。海外の業者が日本から撤退したり出金を止めたりした例は海外取引所の撤退・出金停止まとめに集めています
この記事のまとめ
- 成績表の数字は「何を含めて、どの期間で、費用を引く前か後か」で意味が変わります
- 最大ドローダウンには、残高で計算するものと含み損を含めて計算するものがあります。含み損を抱え続けるやり方は、残高のドローダウンが小さく出ます
- 平均の利益と平均の損失の比が1:10なら、収支ゼロの勝率は90.9%です(AGITO計算)
- 勝率70%でも、取引10回なら本当の勝率はおよそ42〜98%の幅でぶれます(AGITO計算)
- ESMAは、過去の成績を一番目立たせないこと、計算方法の説明、費用の影響の開示、トレーダーへの報酬の基準を、監督で確かめる点に挙げています
この記事に出てくる言葉
本文中の点線がついた言葉をクリックすると、ここへ移動します。
- 最大ドローダウン
- 資金が一番高かった所から、その後どこまで減ったかの最大の幅。割合(%)か金額で表す。
- プロフィットファクター
- 勝った取引の利益の合計を、負けた取引の損失の合計で割った値。1より大きければ、決済した取引の合計は黒字。
- ポジション
- 売買して、まだ決済していない取引のこと。持っている間は値動きに合わせて損益が変わる。
- ロット
- 取引する数量の単位。1ロットが表す量は商品や業者によって異なる。
出典(2026年10月7日確認)
- MetaQuotes「テストレポート」(MetaTrader 5 ヘルプ・ドローダウン/プロフィットファクターの定義) https://www.metatrader5.com/ja/terminal/help/algotrading/testing_report
- MetaQuotes「シグナル購読の方法」(MetaTrader 5 ヘルプ・残高/最大ドローダウン%/取引量の計算) https://www.metatrader5.com/ja/terminal/help/signals/signal_subscriber
- ESMA「Supervisory Briefing on supervisory expectations in relation to firms offering copy trading services」(ESMA35-42-1428・2023年3月30日) https://www.esma.europa.eu/sites/default/files/2023-03/ESMA35-42-1428_Supervisory_Briefing_on_Copy_Trading.pdf
- ESMA「ESMA provides guidance for supervision of copy trading services」(2023年3月30日) https://www.esma.europa.eu/press-news/esma-news/esma-provides-guidance-supervision-copy-trading-services
- 金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」 https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyo.html
- 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」 https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/mutouroku.html
※本記事は投資に関する一般的な知識の提供を目的としたもので、特定の商品・サービスの利用や売買を勧めるものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。元本保証はなく、損失が生じる可能性があります。
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