ネットで口座を作ったとき、スマホで免許証を撮って、自分の顔も撮って送りませんでしたか。あのやり方が、2027年4月1日から原則として使えなくなります。
代わりになるのは、マイナンバーカードや運転免許証に入っているICチップの情報をスマホで読み取る方法などです。決めたのは国のルール(犯罪収益移転防止法の施行規則)で、暗号資産の取引所だけでなく、銀行・証券会社・FX会社など、口座開設で本人確認をする事業者に関わります。
10月1日には、国内の暗号資産交換業者のBTCBOXが、利用者向けにこの変更を告知しました。
この記事で分かること
- 2027年4月1日に何が変わるか(使えなくなる方法・残る方法)
- 改正のルールはいつ決まったか(公布日と施行日)
- すでに口座を持っている人はどうなるか
- 自分に関係があるかを確かめられる場所
何が起きたか:本人確認のルールが2027年4月1日に変わる
口座開設のときの本人確認は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(犯収法)とその施行規則で、やり方が細かく決められています。条文と概要は警察庁が公表しています。
今回の変更は、施行規則を改める2つの命令によるものです。どちらも公布済みで、施行日は同じ2027年4月1日です。
| 命令 | 公布 | 施行 | 主な中身 |
|---|---|---|---|
| 令和7年6月24日の改正命令(PDF) | 2025年6月24日 | 2027年4月1日 | ネットや郵送など、対面しない本人確認の方法を見直す |
| 令和8年3月6日の改正命令(PDF) | 2026年3月6日 | 2027年4月1日 | 窓口など対面で書類を見せる方法を中心に見直し、非対面の方法も一部改める |
どちらの命令も、附則は「この命令は、令和九年四月一日から施行する。」の1文です。
金融庁も、2026年7月15日の暗号資産の業界団体との意見交換会で、2つの改正をまとめて次のように伝えています(「業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点」PDF)。
2026年3月6日に犯罪収益移転防止法施行規則が改正され、対面で写真付き本人確認書類の提示を受ける現行の方法につき、対象書類をICチップ付きのものに限定するとともに、当該ICチップの情報の読み取りを必須とすること、また、それ以外の確認方法は原則として廃止されることが決まった。
2025年6月の非対面での本人確認方法に係る改正と同様に、2027年4月1日の施行となるため、各金融機関においては、システム対応等を着実に進めていただきたい。
この記事では、ネット(非対面)の変更を中心に整理します。
ネットの本人確認で使えなくなる方法
令和7年6月の改正命令は、個人の本人確認の方法を定めた条文(施行規則第6条第1項第1号)の方法を、次のように削除または一部変更します。
| 改正前にあった方法 | 2027年4月1日以後 |
|---|---|
| 事業者のアプリで自分の顔と写真付きの本人確認書類を撮影し、その画像を送る | 削除 |
| 事業者のアプリで本人確認書類の画像、またはICチップの情報を送り、ほかの確認と組み合わせる | ICチップの情報を送る形だけが残る |
| 本人確認書類の画像などを送り、その住所に、転送されない郵便で書類を送る | 画像を送る形が外れる |
| 本人確認書類の写しを2点(または写しと公共料金の領収書などの補完書類)郵送し、その住所に、転送されない郵便で書類を送る | 削除 |
1つ目は、改正前の条文で「ホ」の記号が付いていた方法です。条文は、アプリで「撮影をさせた当該顧客等の容貌及び写真付き本人確認書類の画像情報」の送信を受ける方法、と書いています。冒頭で触れた「免許証と顔を撮って送る」やり方です。
BTCBOXの告知は、この変更を次のように説明しています。
非対面での本人確認では、原則として本人確認書類の画像や写しによる確認ができなくなり、ICチップ付き本人確認書類のICチップ情報を利用した本人確認が必要となります。
対象の書類として、BTCBOXはマイナンバーカード・運転免許証・在留カード・特別永住者証明書・日本国旅券などを挙げています。
残る方法
改正後も、次のような方法は条文に残っています。
- 本人確認書類のICチップの情報を、事業者のアプリで読み取って送る方法
- マイナンバーカードの電子証明書(公的個人認証)を使う方法
- スマートフォンに搭載したマイナンバーカードの機能(カード代替電磁的記録)を使う方法
どの方法を受け付けるかは、各事業者が決めます。どれが使えるかは、口座を作る会社によって違います。
「原則として」の例外
改正命令は、住民基本台帳法の適用を受けない人と、国外に転出した人(国外転出者)に限って、本人確認書類の画像を送る方法や写しを送る方法を残す規定を新しく置いています。日本に住民登録がある人の多くは、この例外に当たりません。
自分に関係があるか:すでに口座がある人はどうなる?
すでに口座を持っている人
警察庁の「犯罪収益移転防止法の概要」(PDF・令和8年8月7日時点)は、すでに本人確認(取引時確認)を済ませた顧客との取引について、次のように書いています。
特定事業者が取引を行う顧客等について既に取引時確認を行っており、かつ、当該取引時確認について記録(確認記録)を保存している場合には、顧客等から記録されている者と同一であることを示す書類等の提示又は送付を受けるか、顧客等しか知り得ない事項等の申告を受けることにより、顧客等が当該記録と同一であることを確認(中略)するとともに、確認記録を検索するための事項、取引等の日付、取引等の種類を記録し、取引の日から7年間保存すれば、取引時確認済みの顧客等との取引として、改めて取引時確認を行う必要はありません。
つまり、記録が残っていることに加えて、原則として記録の人と同じ人であることの確認と、所定の記録・保存が条件です(面識があるなど、同じ人であることが明らかな場合は、その確認を要しないとされています)。
ただし同じ資料は、ハイリスク取引や特別の注意を要する取引に当たる場合は、改めて確認が必要としています。また、2つの改正命令の附則には、既存の顧客にやり直しを求める規定は見当たりません。
一方で、同じ資料は、確認した情報を最新の内容に保つ措置も事業者に求めています。各社の対応や取引の状況によって、登録情報の更新や再確認を求められる可能性はあります。自分の口座で何か求められるかは、各社のお知らせが確認先になります。
2027年4月1日以後に新しく口座を作る人
ネットで申し込む場合、残る方法には、ICチップの読み取りやマイナンバーカードの電子証明書を使うものがあります。本人確認書類の送付と転送されない郵便を組み合わせる方法も、形を変えて残ります。対象は暗号資産に限らず、犯収法で本人確認が義務づけられている事業者です(銀行、証券会社、FX会社、暗号資産交換業者など)。
どこを見れば分かるか
| 知りたいこと | 確認できる場所 |
|---|---|
| 改正の条文そのもの | 警察庁 JAFIC「法令・告示等」 |
| 自分が使っている会社の対応 | 各社のお知らせ・本人確認の案内ページ |
| 受け付ける書類の種類 | 各社の本人確認の案内ページ(BTCBOXが挙げた書類も「など」で、受け付ける書類は事業者ごとに異なる) |
この件が示していること:ネットの本人確認は「画像」から「ICチップ」へ
削られる方法と残る方法を並べると、線の引き方がはっきりします。一般の個人の口座開設で削られるのは、書類の画像や写しを受け取る方法です。残る方法には、ICチップに記録された情報や電子証明書を受け取るものがあります(書類の送付と郵便を組み合わせる方法や、対象者・取引を限った例外も残ります)。今回の改正は、ネットの本人確認の土台を、人が目で見る画像から、書類に記録された電子的な情報へ移すものです。
関連する論点は、以前の記事でも取り上げています。
| 時期 | 出来事 | 記事 |
|---|---|---|
| 2025年6月24日 | ネットの本人確認を見直す改正命令が公布 | この記事 |
| 2026年3月6日 | 対面の確認方法を見直す改正命令が公布 | この記事 |
| 2026年7月15日 | 金融庁が暗号資産の業界団体との意見交換会で、2つの改正への対応を求めた | 金融庁がJVCEAに提起した論点に「販売所への誘導」 |
| 2026年10月1日 | BTCBOXが利用者向けに変更を告知 | この記事 |
| 2027年4月1日 | 2つの改正命令の施行 | この記事 |
口座を作るときに使う本人確認書類、ICチップは入っていますか。
現時点で未確定の事項
- 各事業者が、2027年4月1日以後にどの確認方法を受け付けるか(BTCBOX以外の告知は、この記事の確認時点では調べていない)
- 既存の利用者に、事業者が独自に再確認を求めるかどうか
- 施行日をまたいで手続き中だった申込みの扱い(改正命令の附則に個別の規定はない)
出典・確認日
- 警察庁 JAFIC「法令・告示等」
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令(令和7年6月24日)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令(令和8年3月6日)
- 警察庁「犯罪収益移転防止法の概要」(令和8年8月7日時点)
- 金融庁「業界団体との意見交換会において金融庁が提起した主な論点[2026年7月15日開催 日本暗号資産等取引業協会]」
- BTCBOX「本人確認方法の変更に関するお知らせ」(2026年10月1日掲載)
確認日: 2026年10月2日。本記事は公表された法令・資料の記載を整理したものです。個別の手続きの確認先は、利用している事業者の案内です。
この記事のまとめ
- 2027年4月1日から、ネットの本人確認で「顔と本人確認書類を撮影して送る」方法が削除されます。一般的な口座開設で使われてきた、写しを郵送する方法も削除されます(対象者や取引を限った例外あり)
- 残るのは、ICチップの情報をアプリで読み取る方法、マイナンバーカードの電子証明書を使う方法などです
- 窓口など対面で写真付きの本人確認書類を見せる方法も、金融庁の説明では、ICチップ付きの書類に限られてICチップの読み取りが必須になり、それ以外の方法は原則として廃止されます(住民基本台帳法の適用を受けない人など、例外の規定もあります)
- ルールは2つの命令で決まっていて、公布は2025年6月24日と2026年3月6日、施行はどちらも2027年4月1日です
- 暗号資産の取引所に限らず、銀行・証券・FXなど、口座開設で本人確認をする事業者が対象です
- すでに本人確認を済ませた人は、警察庁の概要では、原則として記録の人と同じ人であることの確認と所定の記録・保存を条件に、改めて本人確認をする必要はないとされています(ハイリスク取引などを除く)。各社の対応によって、登録情報の更新などを求められる可能性はあります
あわせて読みたい
- 金融庁がJVCEAに提起した論点に「販売所への誘導」|販売所と取引所の違い、UIの導線を対話の対象に【2026年9月】
- 口座開設の流れ ── 初心者向けに手順と必要なものを解説【2026年版】
- 口座と個人情報を守る ── フィッシング・出金トラブルから資産を守る基本
※本記事は公表された資料・発表の内容を整理した一般的な情報提供であり、特定の個人・団体・商品・サービスの利用や解約を勧めるものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。元本保証はなく、損失が生じる可能性があります。税務の取扱いについては税理士に、法律上の論点については弁護士にご確認ください。
まずは、投資の基礎を無料で学ぶ
AGITOアプリで、解説記事・用語集・市場情報を確認できます。学習コンテンツと市場情報は無料です。
記事の内容に誤りを見つけた場合は、info@agito-investor.com までお知らせください。確認のうえ訂正します。










コメント