結論から言うと、AIに投資の判断を相談するとき、間違った答えと同じくらい気をつけたいのが「質問の仕方によって、答えが変わること」です。 ChatGPTなどの生成AIは、同じ対象について聞いても、こちらの聞き方が変わると返ってくる内容が変わることがあります。しかも変わったことは、画面を見ているだけでは分かりません。この記事では、投資の判断についてAIと話している人が、その場でできる確認のしかたを3つ整理します。
AIの投資判断で、数字の間違いより見えにくいもの
AIの注意点として、よく2つが挙げられます。ひとつはハルシネーション、つまり事実でないことをもっともらしく答えてしまうこと。もうひとつは、学習した時点より新しい情報を持っていないことです。どちらも実際に起こります。
この2つは、突き合わせる先がはっきりしているという共通点があります。銘柄コードや決算の数字なら、証券会社の画面や企業の公表資料と比べれば違いが出ます。とはいえ、比べる作業をしなければ気づけないので、簡単というわけではありません。
それとは別に、こちらの前置きに合わせて答えの向きが動くことがあります。数字が間違っているわけではないので、資料と突き合わせても出てきません。AIの投資分析を使ううえでの危険性は、むしろこちら側にあります。
質問の仕方で答えが変わる ── 実際に測った記録
私たちの作業で、次のような検証をしました。2026年9月に、ある1つの生成AI(Gemini 3.8 Flash)で、1回ずつ試した結果です。投資の話ではなく、記事の文章を点検する作業で起きたことです。
ある文章の80か所について「この用語は説明が足りているか」を判定させました。1回目は、こう前置きしました。
「機械の検査が『説明が足りない』と挙げた80件です」
返ってきた判定は、80件すべてが「説明が足りない」。ひとつも否定しませんでした。
2回目は、その前置きを外しました。検査結果を伝えず、文章の前後だけを見せて、同じ基準で判定させました。
返ってきた判定は、13件が「足りている」。実際に読み返すと「約定(成立)」のように、その場で言い換えられていて説明が要らないものでした。
| 渡し方(プロンプトの違い) | 「足りている」と答えた件数 |
|---|---|
| 「検査が挙げた80件です」と前置きした | 0件 |
| 前置きを外し、文章の前後だけを見せた | 13件 |
対象の80か所も、判定の基準も同じ文言でした。変えたのは前置きだけです。1回ずつの試行なので、これだけで「必ずこうなる」とは言えません。ただ、同じ材料でも渡し方で結果が動きうることは、この1件で確かめられました。
投資の相談に置き換えると、こういう場面が当てはまります。
- 「この銘柄、良さそうなんですが」と聞く
- 「この銘柄、やめたほうがいいでしょうか」と聞く
同じ対象でも、返ってくる材料の並び方が変わることがあります。質問の書き方によって、答えの内容が影響を受けることがあるということです。
AIの答えを確かめる3つの方法
① 前置きを外して、もう一度聞く(プロンプトから見立てを抜く)
最初の質問に自分の見立てが入っていたなら、それを抜いて聞き直す方法があります。
| 見立てが入った聞き方 | 見立てだけを外した聞き方 |
|---|---|
| この銘柄は割安だと思うのですが、どうですか | この銘柄はどうですか |
| この商品は安全ですよね | この商品のリスクはどうですか |
| やめたほうがいいと思うのですが、どうでしょう | この判断について、どうでしょう |
答えが大きく変わったなら、最初の答えは前置きの影響を受けていたことになります。どちらが正しいかを決めるのは別の作業で、ここではぶれたという事実が見えることが目的になります。
② 会話を切って、新しい画面で聞き直す
長く話し込んだ会話では、AIは前のやり取りを引き継いで答えます。途中で置いた前提も引き継がれる傾向があります(会話が長くなるほど、前のほうの内容は薄まっていくとも言われます)。
私たちが同じ点を試したときは、こうなりました。ある文章の欠陥を探させたところ、長い会話の続きでは3件、まったく新しい会話では同じ3件に加えて、さらに4件挙がりました。これも1回ずつの試行で、モデルはClaude Opus 5、2026年9月の結果です。なお、多く挙がったほうが正しいとは限りません。新しい会話のほうが的外れな指摘をしている可能性も、同じようにあります。
回数が少ないので一般的な性質とまでは言えませんが、長く相談したあとの結論を、新しい会話でもう一度聞いてみるという確認のしかたはあります。
③ 数字は、AIの外で確かめる
株価、決算の数字、制度の内容、手数料。これらを同じ会話の中で聞き直しても、前の答えを踏まえた説明が返ってくるだけになりやすい面があります。会話を変えれば違う答えになることもありますが、どちらが正しいかはAIの中では決まりません。
証券会社の画面、企業のIRページ、金融庁や国税庁の公表資料。元の発表そのもの(会社や官庁が出した資料)と突き合わせることが、数字の確認になります。誰かがまとめ直した記事ではなく、発表そのものに当たるのが要点です。
同じ答えが返っても、正しいとは限らない
聞き直して同じ答えが返ってきたら安心したくなりますが、同じ思い込みが繰り返された場合も、見え方は同じになります。
これは前の検証とは別の作業ですが、私たち自身も、機械の検査結果を鵜呑みにしかけたことがあります。「必要な記載が14か所ない」と出たので、そのまま直そうとしました。実物を1件ずつ読むと、7件は別の言い回しですでに入っていました。検査が探していた言葉と違っただけでした。
一致したかどうかではなく、実物に当たったかどうかが分かれ目になります。
AIに任せることと、AIの外で確かめること
| AIに任せやすいこと | AIの外で確かめたいこと |
|---|---|
| 言葉の意味を平易に説明してもらう | 株価・決算・手数料などの数字 |
| 自分が見落としている観点を挙げてもらう | 制度・税制・法令の内容 |
| 長い資料の要点を整理してもらう(分析の下ごしらえ) | その資料に本当にそう書いてあるか |
| 反対の立場から材料を挙げてもらう | 最終的にどうするかの判断 |
最後の行が要点です。ChatGPTなどの生成AIは、判断を代わってくれません。材料を並べるところまでが役割で、そこから先は自分の口座と自分の生活の話になります。AIとのやり取りが投資助言にあたるかどうかは、誰がどういう形で提供しているかによります。ツールを自分で使っているだけなら通常は別の話ですが、「AIが言ったから大丈夫」という理屈にはならない、という点は材料のひとつです。
まとめ|AIの投資判断は、質問の仕方とセットで見る
- AIの答えは、こちらの前置きの影響を受けることがあります。ある1件の検証では、前置きの有無だけで判定が0件から13件に変わりました
- 確認のしかたは3つ。前置きを外して聞き直す/会話を切って新しい画面で聞く/数字はAIの外で確かめる
- 答えが変わったかどうかを見るのが目的で、どちらが正しいかを決めるのは別の作業になります
- 同じ答えが返っても正しいとは限りません。実物に当たったかどうかが分かれ目です
この記事の数字は、いずれも私たちが自分たちの作業で実際に測ったもので、それぞれ1回ずつの試行です。実行のログは社内に保存していますが、外部から検証できる形では公開していません。使うAIや時期が変われば、同じ結果になるとは限りません。投資の判断そのものについては触れていません。
この記事に出てくる言葉
本文中の点線がついた言葉をクリックすると、ここへ移動します。
- ハルシネーション
- AIが、事実ではないことを事実のように答えてしまうこと。もっともらしい文章で返ってくるため、読んだだけでは間違いだと気づきにくいのが特徴です。
- 決算
- 会社が一定の期間ごとに、売上や利益がいくらだったかをまとめて公表するもの。上場している会社は、決められた時期に公表することが義務づけられています。
- 投資助言
- 金融商品取引法にもとづく業務のひとつで、投資顧問契約により、有価証券などの価値の分析にもとづいて助言を行うことを指します。行うには登録が必要です。登録が無ければ当たらない、という意味ではなく、登録せずに行えば法律に違反することになります。
※本記事は投資に関する一般的な情報・教育を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨・助言するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。元本保証はなく、損失が生じる可能性があります。税務の取扱いについては税理士に、法律上の論点については弁護士にご確認ください。
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