暗号資産を預けて報酬をもらう「ステーキング」について、SBI VCトレードが2026年9月2日、報酬の受取方法に円と1対1で連動する「JPYSC」というデジタルのお金を追加しました。対象は同社の「VCTRADEサービス」です。
同社は、もうひとつの「BITPOINTサービス」では以前からステーキング報酬の日本円受取を提供しており、VCTRADEサービスでも円建て受取の要望が寄せられていた、と説明しています。
同じ日に、契約前に読む書面(暗号資産取引説明書)も改定されています。JPYSCは日本円そのものではなく、いまのところ外部のウォレットへ出し入れすることもできません。
この記事で分かること
- 何が変わったのか
- JPYSCとは何か(日本円との違い)
- 受取金額はいつの価格で決まるのか
- 設定の反映タイミングと対象サービス
- 税金の扱いについて、国税庁のFAQに書かれていること・書かれていないこと
- 現時点で未確定の事項
制度と各社の公表内容を整理したものであり、特定の投資判断や資産の移動を推奨するものではありません。
SBI VCトレードのステーキング報酬の受取方法に何が追加されたか
SBI VCトレードは2026年9月2日、ステーキング報酬を円建てステーブルコイン「JPYSC」で受け取るサービスを開始したと公表しました。同社の告知によると、対象はVCTRADEサービスで、BITPOINTサービスは対象外です。
同社は、BITPOINTサービスでは以前からステーキング報酬の日本円受取を提供しており、VCTRADEサービスでも円建てでの受取について要望が寄せられていたことが今回の背景だと説明しています。
対象銘柄について同社は、VCTRADEサービスで取り扱っている全てのステーキング対象銘柄で、報酬の受取方法としてJPYSCを選べるとしています。
同日付で、『暗号資産取引説明書』(契約締結前交付書面)も改定されました。改定内容は「JPYSCのステーキング報酬受取の追加に伴う記載の追加」、施行日は2026年9月2日です。新旧対照表も同社サイトで公開されています。
JPYSCとは何か|日本円とは別のもの
JPYSC(ジェイピーワイエスシー)は、SBIグループとStartale Groupが2026年6月24日に提供を開始した、信託型の円建てステーブルコインです。
重要な点として、同社は告知に「JPYSCは、日本円ではありません」と注記しています。日本円と1対1の価値に連動するとされていますが、法定通貨そのものではなく、資金決済法上の電子決済手段という位置づけです。
SBI VCトレードは同社サイトに、暗号資産交換業(関東財務局長第00011号)に加えて電子決済手段等取引業(関東財務局長第00001号)の登録を掲載しています。この電子決済手段等取引業という登録制度と、金融庁が公表している登録業者の一覧については、電子決済手段等取引業者とは?金融庁の登録一覧は国内2社で整理しています。
なお同社は、JPYSCは現在のところ入出庫(外部への送付・外部からの受取)に対応していないとしています。同社口座内で日本円と交換して出金する、あるいは交換した日本円で他の暗号資産を購入する、といった扱いになります。
同社は告知のなかで、暗号資産および電子決済手段について「国等によりその価値が保証されているものではありません」「価格変動により損失が生じる可能性があります」「当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産及び電子決済手段を返還することができない可能性があります」といった注意点も併記しています。
受取金額はいつの価格で決まるのか
同社が公表しているサービス概要のうち、利用者側の手続きに関わる部分は次の3点です。いずれも同社告知の記載です。
| 項目 | 同社の記載 |
|---|---|
| 設定方法 | マイページにログイン後、「ステーキング報酬の受取方法」で選択 |
| 設定反映 | 月末までに設定した内容が、翌月のステーキング報酬に反映 |
| 換算価格 | 報酬のうち利用者受取分について、報酬受取日の午前7時00分時点の同社販売所価格で日本円に換算し、1円=1JPYSCのレートで口座に反映 |
つまり、設定を月の途中で変えても、その月の報酬にはさかのぼって適用されない書き方になっています。また、円建てで受け取るといっても、もとの暗号資産をいくらの価格で円に換算するかは受取日の朝7時時点の価格で決まります。設定後に価格が動いても、換算に使われるのはこの時点の価格だという整理です。
税金の扱い|国税庁FAQに書かれていること
暗号資産のステーキング報酬の課税関係については、国税庁が「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」を公表しています。現在公開されているものは令和7年12月に最終改訂されたもので、令和7年12月1日現在の法令・通達等に基づいて作成されたものだと本文に明記されています。
このFAQの「1-7 マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合」には、次の記載があります(一部を省略した抜粋です)。
マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合、その取得に伴い生ずる利益は所得税又は法人税の課税対象となります。(中略)その取得した暗号資産の取得時点の価額(時価)については所得の金額の計算上総収入金額(法人税においては益金の額)に算入され、マイニング等に要した費用については所得の金額の計算上必要経費(法人税においては損金の額)に算入されることになります。
所得の区分については「2-2 暗号資産取引の所得区分」(令和7年12月更新)に、次の整理が置かれています。
- 原則として雑所得(その他雑所得)に区分される
- その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合、帳簿書類の保存があれば原則として事業所得、保存がなければ原則として業務に係る雑所得
- ただし、帳簿書類の保存があっても暗号資産取引に営利性が認められない場合などには、事業所得に該当するかどうかを個別に判断する(同項目の注記)
いずれも「暗号資産取引」についての説明であり、後述のとおり、JPYSCで受け取った場合にそのまま当てはまると結論づけられるものではありません。
FAQに固有の記載が見当たらない部分
一方で、報酬を暗号資産ではなく電子決済手段(JPYSC)で受け取った場合について、このFAQに個別の項目は確認できませんでした。
FAQの目次を見ると、電子決済手段に関する項目は「3-2 電子決済手段関係」(取得時、譲渡時、期末時、外貨建電子決済手段の期末時に関する4問)としてまとめられていますが、これは「3 法人税関係」の下に置かれた項目です。所得税に関する章(2 所得税関係、2-1〜2-13)に、電子決済手段固有の項目は置かれていません。また上記の1-7も、問いの立て方は「暗号資産を取得した場合」です。
SBI VCトレードの今回の告知にも、税務上の取扱いに関する記載はありません。
したがって、今回確認したSBI VCトレードの2つの告知と国税庁FAQからは、この受取方法を選んだ場合の所得税の具体的な計算方法を一意に確認できません。個別の申告における取扱いは、税務署または税理士への確認事項のひとつです。
なお、暗号資産の税率そのものを変える改正(分離課税)の適用時期や、信託型ステーブルコインに関する金融庁の税制改正要望の状況は別の論点です。要望の中身は金融庁の税制改正要望に暗号資産の課税項目はなし|信託型ステーブルコインの調書免除を要望で扱っています。
現時点で未確定の事項
- 報酬をJPYSC(電子決済手段)で受け取った場合の所得税上の取扱い — 国税庁FAQに固有の項目は確認できていません
- JPYSCの入出庫への対応時期 — 同社は「現在のところ入出庫対応しておりません」とのみ記載しており、対応予定の有無は公表されていません
- BITPOINTサービスでの扱い — 今回のJPYSC受取は対象外とされています。両サービス統合後の扱いは公表されていません
- 他の国内交換業者が同様の受取方法を導入するか — 2026年9月3日時点で、他社の同種の公表は確認していません
- JPYSCレンディングの年率 — 同社は募集状況等により変更となる場合があるとしています
この記事のまとめ
- SBI VCトレードが2026年9月2日、VCTRADEサービスでステーキング報酬をJPYSCで受け取る選択肢を追加し、同日付で『暗号資産取引説明書』を改定しました
- JPYSCは日本円と1対1で連動するとされる電子決済手段であり、同社は「日本円ではありません」と明記しています。現時点で入出庫には対応していません
- 換算は報酬受取日の午前7時00分時点の同社販売所価格、設定は月末までの分が翌月の報酬に反映という整理です
- 国税庁FAQは、ステーキングにより暗号資産を取得した場合の取扱いを示していますが、電子決済手段で受け取った場合の所得税上の項目は確認できませんでした
確認日: 2026年9月3日。本記事は各社・各官庁の公表資料の記載を整理したものです。
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