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SNS型投資詐欺の被害額、8月末で937億円|前年同期比+54%なのに、月ごとの被害は3月をピークに減り続けている【警察庁・2026年10月】

2026 10/07
金融ニュース
2026.10.07
監修:佐藤 翔(証券会社に約20年勤務)
運営:株式会社シンセイサービス(AGITO編集部)/運営者情報・編集方針

編集部メンバー:なってぃ|AGITO編集部(Xプロフィール)

「SNS型投資詐欺、前年の同じ時期より5割増」。そう聞くと、ますます増えていると感じるはずです。

ところが、同じ警察庁の資料を月ごとに並べ直すと、被害額は3月をピークに、4月から8月まで5か月続けて前の月を下回っています。どちらも本当の数字です。

警察庁が10月2日に出した8月末までの統計では、SNS型投資詐欺の被害は今年8か月で937.4億円。すでに去年1年分の7割を超えました。それでも「増え続けている」とは言い切れない理由が、数字の並び方の中にあります。

目次

この記事で分かること

  • 警察庁が公表した2026年8月末までのSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺の件数と被害額
  • 2025年1月からの月別の被害額の推移
  • 「前年同期比+54%」と「月ごとには減少」が同時に成り立つ理由
  • 被害にあっている年代、最初の接触に使われたSNS、お金の渡し方
  • 2026年から統計の分類が変わった点(前年と比べるときの注意点)

何が起きたか:警察庁が8月末の統計を公表

警察庁は2026年10月2日、「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」を公表しました。数字はいずれも暫定値で、前年同期(2025年1〜8月)との比較が付いています。

主な手口の数字は次のとおりです。

手口認知件数(前年同期比)被害額(前年同期比)
SNS型投資詐欺7,097件(+2,347件/+49.4%)937.4億円(+328.0億円/+53.8%)
ニセ警察詐欺6,346件(−274件/−4.1%)728.6億円(+155.1億円/+27.0%)
SNS型ロマンス詐欺3,506件(+13件/+0.4%)325.8億円(+2.5億円/+0.8%)
オレオレ詐欺2,739件(+474件/+20.9%)104.2億円(+16.9億円/+19.3%)
架空料金請求詐欺4,211件(+504件/+13.6%)97.5億円(+13.5億円/+16.0%)
金融商品詐欺286件(+178件/+164.8%)28.4億円(+15.4億円/+117.9%)
特殊詐欺の合計29,687件(+3,732件/+14.4%)2,360.7億円(+588.4億円/+33.2%)

SNS型投資詐欺は、件数でも被害額でも手口別の1位です。被害総額2,360.7億円のうち937.4億円で、計算すると約4割(39.7%)を占めます。

2026年から「特殊詐欺」の数え方が変わっている

前年と比べるときに、ひとつ注意点があります。警察庁は資料の中で、2026年から次のように整理し直したと書いています。

SNS型投資・ロマンス詐欺を特殊詐欺の一手口として位置付けました。

2025年までは、「特殊詐欺」と「SNS型投資・ロマンス詐欺」は別々に集計されていました。2025年の確定値は、特殊詐欺が約1,423.1億円、SNS型投資詐欺が1,288.0億円、SNS型ロマンス詐欺が546.4億円です(令和7年の確定値)。

つまり、2026年の「特殊詐欺 2,360.7億円」には、SNS型投資・ロマンス詐欺が含まれています。2025年の「特殊詐欺 1,423.1億円」とそのまま比べると、増え方を大きく見誤ります。8月末の資料に載っている前年同期比(+33.2%)は、2025年分も3つを合わせた数字と比べたものです。実際、資料に載っている2025年の月別被害額を12か月足すと3,257.5億円で、上の3つの確定値の合計と一致します。

月別に並べると:被害額は3月をピークに、4月から5か月続けて減少

警察庁は上半期の資料(7月31日公表・PDF)に、SNS型投資詐欺の月別の件数と被害額を載せています。7月と8月は、各月末の累計(暫定値)の差から計算しました。

月認知件数被害額
2025年1月352件40.8億円
2025年2月334件34.1億円
2025年3月470件56.2億円
2025年4月517件60.3億円
2025年5月583件82.8億円
2025年6月617件78.8億円
2025年7月866件114.3億円
2025年8月1,011件142.2億円
2025年9月1,169件169.3億円
2025年10月1,304件172.6億円
2025年11月974件126.9億円
2025年12月1,326件209.7億円
2026年1月1,084件157.0億円
2026年2月1,003件132.3億円
2026年3月1,310件166.8億円
2026年4月984件136.4億円
2026年5月718件107.9億円
2026年6月794件97.4億円
2026年7月(計算)約673件約83.3億円
2026年8月(計算)約531件約56.2億円

被害額は、2026年3月の166.8億円から、4月136.4億円、5月107.9億円、6月97.4億円と下がり、計算上は7月約83.3億円、8月約56.2億円です。4月から8月まで、5か月続けて前の月を下回っています。件数は6月にいったん増えていて、一直線に減っているわけではありません。

8月の約56.2億円は、2025年3月(56.2億円)と同じくらいの水準です。ただし7・8月の値は暫定値どうしの差から出したもので、警察庁が月別の値として公表したものではありません。後の公表で数字が変わることがあります。

警察庁の全手口の合計でも、2026年8月の単月の被害額は252.6億円で、2026年に入ってからの各月の中でいちばん小さい値です(8月末の資料のグラフの数値)。

なぜ「前年同期比+54%」になるのか

月ごとには減っているのに、前年同期比は+53.8%。食い違って見えるのは、比べる相手の2025年1〜8月が、まだ小さかったからです。

上の表のとおり、2025年のSNS型投資詐欺は夏から急に増えました。2025年1月は40.8億円でしたが、12月には209.7億円です。年間1,288.0億円のうち、9〜12月の4か月だけで678.5億円。計算すると半分強(52.7%)が年末の4か月に集中しています。

前年同期比の推移を並べると、比べる相手が大きくなるにつれて、伸び率が縮んでいるのが分かります。

時点SNS型投資詐欺の被害額(累計)前年同期比
2026年3月末456.1億円+250.5%
2026年6月末797.9億円+126.0%
2026年7月末881.2億円+88.6%
2026年8月末937.4億円+53.8%

2025年は9月から12月にかけて、毎月127〜210億円が積み上がりました。2026年8月までの937.4億円は、すでに2025年の年間1,288.0億円の72.8%です。9月以降の数字が前年の秋をどこまで追うかで、年間の比較は大きく変わります。

自分に関係があるか:被害にあっているのは誰か

年代:50代と60代で半分以上

上半期(1〜6月)の資料では、SNS型投資詐欺の認知件数は50代が1,605件で最も多く、60代が1,518件、40代が1,003件、70代が739件と続きます。50代と60代で、件数の53.0%、被害額の59.5%です。

既遂1件当たりの被害額は1,362.5万円(前年同期より+133.3万円)。特殊詐欺全体の840.0万円を大きく上回ります。

最初の接触:Instagram・X・LINE、そして「広告」と「投稿」

被害者が最初に接触したツールは、Instagramが1,403件、X(旧Twitter)が677件、LINEが631件で、この3つで約5割です。TikTok(553件)、投資のサイト(553件)、Facebook(552件)、YouTube(438件)も並び、警察庁は「当初接触ツールの多様化が認められる」と書いています。

接触の手段では、バナー等の広告が2,330件(+165.1%)、ダイレクトメッセージが1,698件、投稿が1,457件(+397.3%)です。前年同期と比べて、広告と投稿からの被害が大きく増えています。

その後のやり取りに使われた連絡ツールは、LINEが5,658件で全体の9割以上でした。入口のSNSはさまざまでも、やり取りはLINEに移る流れが数字に出ています。

お金の渡し方:振込が約7割、暗号資産の送信が約2割

被害金の渡し方は、振込型が4,084件(69.3%)で、そのうちインターネットバンキングを使った振込が2,996件です。暗号資産を送らせる型は1,288件(21.9%)、128.4億円でした。

暗号資産での送金は、国内の取引所が送金の制限を相次いで入れている分野でもあります。10月15日から始まるbitFlyerの「クールダウン」は、本人確認から90日未満の個人が日本円を入れて48時間以内に外へ送る流れに時間を置く仕組みです(bitFlyerの送付制限の記事)。

相談先の所在

警察庁のページには、相談先として警察相談専用窓口「#9110」、消費者ホットライン「188」が載っています。被害金が戻るかどうかの仕組み(振り込め詐欺救済法)は、投資詐欺で振り込んだお金は取り戻せる?で整理しています。

この件が示していること:「減っている」と「増えている」は両方言える

同じ資料から、「前年同期比5割増」とも「5か月続けて減少」とも書けます。どちらを見出しにするかで、受け取る印象はまったく違います。

数字の並びから言えるのは、次の3つです。

  • 2026年の被害額は、8か月ですでに2025年1年分の7割を超えている
  • 月ごとの被害額は、3月をピークに8月まで下がっている(7・8月は暫定値からの計算)
  • 前年同期比の伸び率が縮んでいるのは、前年の夏以降に被害が急増していたため

この間、政府は2026年8月にSNS事業者5社へなりすまし広告の対策を要請し(なりすまし詐欺広告の政府要請)、金融庁・警察庁は業界団体を通じて、暗号資産の交換業者に出庫の制限などを要請しました(金融庁の暗号資産11項目要請)。ただし、こうした対策と月別の減少との関係を、警察庁の資料は説明していません。

一方で、変わっていない数字もあります。入口は広告と投稿で増え、やり取りの9割以上はLINEです。広告や投稿で接触し、LINEでやり取りするという組み合わせは、SNS型投資詐欺の手口で書いた流れと重なります。

この半年で、あなたのSNSに流れてきた「投資の広告」は、いくつありましたか。

現時点で未確定の事項

  • 7月・8月のSNS型投資詐欺の月別の値(本記事は各月末の累計の差から計算した)
  • 暫定値が確定値でどこまで変わるか(2025年分の確定値は翌年6月に公表された)
  • 月別の被害額が減っている理由(警察庁の資料に説明はない)
  • 2026年9月以降の推移(9月末の統計の公表日は告知されていない。2025年の9月末分は11月5日に公表された)

出典・確認日

  • 警察庁「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年10月2日)/PDF
  • 警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年7月31日)/PDF
  • 警察庁「令和8年7月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年9月4日)
  • 警察庁「令和8年3月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年5月1日)
  • 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年6月5日)

確認日: 2026年10月7日。本記事は警察庁の公表資料の数値を整理・計算したものであり、特定の投資判断を推奨するものではありません。

この記事のまとめ

  • 警察庁の8月末の統計(暫定値)で、SNS型投資詐欺は7,097件・937.4億円。前年同期比で件数+49.4%、被害額+53.8%です
  • 手口別では件数・被害額ともに1位で、特殊詐欺の被害総額2,360.7億円の約4割を占めます
  • 2026年から、SNS型投資・ロマンス詐欺は「特殊詐欺」に含めて集計されています。2025年の「特殊詐欺」の数字とそのまま比べると増え方を見誤ります
  • 月別の被害額は、2026年3月の166.8億円をピークに4月から下がり続け、8月は計算上約56.2億円です(7・8月は暫定値の累計の差)
  • 前年同期比の伸び率が縮んでいるのは、2025年の被害の半分強が9〜12月に集中していたためです
  • 被害は50代・60代が中心で、1件当たりの被害額は1,362.5万円(上半期)。入口は広告と投稿が大きく増え、やり取りの9割以上はLINEです
  • 被害金の渡し方は振込が約7割、暗号資産の送信が約2割です

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※本記事は公表された資料・発表の内容を整理した一般的な情報提供であり、特定の個人・団体・商品・サービスの利用や解約を勧めるものではありません。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。元本保証はなく、損失が生じる可能性があります。税務の取扱いについては税理士に、法律上の論点については弁護士にご確認ください。

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